鹿児島の磨崖仏を巡るプロジェクトの中間報告会「鹿児島磨崖仏巡礼vol.1」が6月13日、鹿児島市内で行われた。
磨崖仏とは、「岩壁や巨大な岩など、自然の岩に刻んだ仏像(または仏教的造形物)」で、「鹿児島にいくつの磨崖仏があるのか、その全貌はいまだに不明」だという。鹿児島磨崖仏巡礼は、「鹿児島古寺巡礼」の著者で写真家の川田達也さんと、「鹿児島西本願寺の草創期」著者で「南薩の田舎暮らし」代表の窪壮一朗さんがコラボしたプロジェクトで、「鹿児島の磨崖仏を全部網羅したガイドブックを作る」ことを目指している。
窪さんは「川田さんと何らかの形でコラボしてみたいという思いがまずあった。そこで自分も興味があり、川田さんの専門(古寺跡)とも関連がある磨崖仏をテーマにしてはどうかと提案。川田さんも賛同し、ガイドブック完成を目標に進めることとなった」と話す。
「2人のコラボと言っても、実際に磨崖仏を巡り、写真を撮っているのは川田さんで、私はそれに対して考察や参考情報を付け加えている。2人が協働する機会が少ないのと、広く皆さんにも面白がってもらいたいという思いから、中間報告会の開催に至った」と窪さん。
報告会では鹿児島の磨崖仏の見どころをいくつか紹介。有名な「倉野磨崖仏」については、「オーンク」という梵字(ぼんじ)に注目。「この文字は世界でここにしかない文字だといわれている。梵字の造字法で『最強の梵字』を考案した。残念ながら文字としての意味はないが、当時の鹿児島に独自の梵字を考案するだけの文化があったという点が面白い」
「伊集院の磨崖仏と呼ばれる、大きな岩に彫られた阿弥陀三尊来迎像。この来迎像は、古くてもせいぜい室町時代くらいに作られたものと考えられるが、妙に古い様式で作られており、様式だけ見ると平安時代くらいのものに見えるというのが謎」とも。
参加者からは「磨崖仏を斬新な切り口で紹介してくれた」「今までよく分からなかったものがふに落ちていき、もっと磨崖仏を知りたくなった」「まるで磨崖仏を一緒に旅し、歩いているようだった」などの声が上がった。
窪さんは「ガイドブックの完成は、目標ではあるが目的ではない。まずは私たち2人が磨崖仏の世界を楽しんで、さらには磨崖仏を面白がってくれる人がたくさん現れるのが目的。今はまだ本の基盤となる調査段階。イベントを開く中で、この機運が盛り上がっていけば」と期待を込める。
報告会は全部で4回ほどを予定している。今後の開催予定はブログ「鹿児島の磨崖仏ノート」で知らせる。