東酒造(鹿児島市小松原)が伝統的手法で製造する「黒酒」に、さつま揚げの揚げ色や舌触り、香りなどを向上する効果があることが分かった。6月22日、鹿児島大学水産学部との共同研究発表会で発表した。
同社が伝統的手法で製造する「黒酒」は、そのルーツを平安時代にまでさかのぼる「灰持酒(あくもちざけ)」の一種。日本酒と同様に食用米を日本麹菌で醸造した調理酒だが、木の灰汁(あく=木灰と水を混ぜた強アルカリ性の上澄み)を加えることで保存性を高める。一般的な日本酒のように加熱殺菌しないため酵素が生きており、米由来の天然アミノ酸(うま味)が豊富とされる。
鹿児島ではさつま揚げの原料や正月の屠蘇(とそ)、酒ずしなどに長年使われてきたが、「黒酒の効果について明確な機能性分析ができておらず、その良さを伝えることができずにいた」ことから、同大水産学部と共同研究を始めたという。
研究では、さつま揚げの原料に黒酒を加えることで、揚げ色はより濃く仕上がり、切り口には艶が出て、舌触りはより滑らかになった。食べる前の香りや、口に入れた時の香りは不使用の場合と比べて倍近くの向上が得られたという。さらに魚の匂いも軽減した。
同社担当の中田雅信さんは「地元企業が製造したものを大学が学術的に再評価することで、伝統や風土性で商品を提案するのではなく、商品の本質的価値で勝負できる良いきっかけになった。より多くの方々に黒酒を使っていただけるよう自信を持って提案していきたい」と話す。同社のホームページやインスタグラムでは黒酒を使ったレシピも多数紹介している。