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親子三代で七宝・彫金の伝統引き継ぐ-「本村工芸美術研究所」個展開催へ

自身が作成した七宝額絵「花咲み(はなえみ)」を持つ久冨木原妙さん(左から妙さん、祖母・幸子さん、母・睦美さん)

自身が作成した七宝額絵「花咲み(はなえみ)」を持つ久冨木原妙さん(左から妙さん、祖母・幸子さん、母・睦美さん)

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 親子三代にわたり七宝・彫金の伝統を引き継ぐ「本村工芸美術研究所」(鹿児島市常盤)の個展が4月1日から、「旅行人山荘」(霧島市)で開かれる。

制作に励む久富木原妙さん

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 三代目として七宝・彫金の伝統を受け継ぎ、作品を制作するのは久冨木原(くふきはら)妙さん。久冨木原さんは現在、制作だけでなく野田女子高等学校の「生活文化・工芸(七宝)」の授業の非常勤講師やイオン鹿児島店内旭屋カルチャースクエアの講師なども務めている。

 同研究所は、妙さんの母方の祖父で日本初の「七宝事典」の著者である本村宗睦さんが立ち上げた工房。しかし、宗睦さんは妙さんの大学合格発表前日に急死。「灯台のない真っ黒な海に放り出された、そんな気分で数年が過ぎた」と話すのは妙さんの母・睦美さん。祖父・宗睦さんの技術をじかに教えてもらうことができなくなった妙さんは、七宝講師である祖母の本村幸子さんや、宗睦さんの弟子として制作に携わってきた人々に教わりながら修業に明け暮れた。

 七宝とは、銅や銀の素地にガラス質の絵の具(うわぐすり)を盛り付け800~850℃で焼き付けたもの。技巧はさまざまあり、シンプルな一点盛りによるアクセサリーから、複数の技巧を組み合わせた額絵から壺まで、多彩な制作が可能。

 今回の個展では、親子三代の作品とその弟子たちの作品も展示する。作品の一部は販売も行う。「七宝でしか表現できない世界を作り上げたい」と妙さん。制作に準備から数カ月かけたという七宝額絵「花咲み(はなえみ)」も展示する。

 妙さんは鹿児島大学理学部生命化学科卒業後、鹿児島市内の金融機関に勤務。昨年退職して正式に工房を引き継いだ。しばらくは、「祖父の存在の大きさをあらためて感じた。また、将来への不安で気持ちが落ち込んでいった」という。しかし、「少し開き直り、気持ちを軽く切り替えてみたらすごく楽になれた」とも。睦美さんも「最近は人が変わったみたい」と、吹っ切れた様子の三代目に目を細める。

 妙さんは、「七宝の魅力を引き出すデザイン、七宝だからこそ自分の良さを引き出すデザインでないと意味がない。お互い、なくてはならないようなものを作っていきたい」と今後の制作について明るい笑顔で語る。

 入場無料。4月30日まで。

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