イタリアントマト「サンマルツァーノ」を鹿児島で栽培し、地域活性につなげようと進められている「サンマルツァーノ・プロジェクト」で、トマトの収穫時期が近づいている。
主催は、特産品を生かした地域おこしを目的としたNPO法人「ぐるっと鹿児島ネットワーク」。ホールトマトの原材料とされることが多い「サンマルツァーノ」は、縦長の実が鈴なりに付くイタリア産食用トマト。イタリアのナポリ市と鹿児島市は、火山を臨む景観が似ていることから姉妹都市契約を結んでおり、2010年に50年目を迎えた。「50年の節目には、市民で参加するような大きなイベントは行われなかった。せっかく姉妹都市なのに、もったいない。もう一歩踏み込んだイベントや長い目で見て有効な何かがNPOでもできないか、ずっと考えていた」と同NPO理事の梅北奈鼓さん(「しゃぶしゃぶ会席 梅屋」社長)。
野菜ソムリエの資格を持つ梅北さんらが着目したのがイタリア産トマト・サンマルツァーノだった。日本のホールトマト缶やトマトソースなどの加工品はほぼ輸入物。「国産のものをほとんど見かけない。イタリアと姉妹都市を結ぶ鹿児島でサンマルツァーノを作り、鹿児島の特産品『サツマ』ルツァーノとして世に出せたら面白いのでは」と、今年に入ってプロジェクトがスタートした。
種をネットで取り寄せ、NPOメンバーで苗に育てる。育てた苗は、プロジェクトに賛同してくれた農家や料理店、個人有志に配布し、約30団体に計1600本の苗を託した。「サンマルツァーノは日本でほとんど作られておらず、栽培方法は個人の方のブログを参照した。今年は取りあえず自分なりに育ててみることにしている。失敗しても構わない、成功も失敗もマニュアルにして来年に生かしたい」と梅北さん。
受け取った苗を育てるメンバーからは、フェイスブックなどを通して近況報告が上がってくるという。第1陣として4月末に定植した苗は、約1カ月後には早くも実が付き、色づき始めた実の収穫を待つばかり。「イタリアには梅雨が無く、日本の梅雨を乗り切れるのか心配だったが他の苗も『花が咲いた』『小さな実ができた』などの声が聞かれ、順調に成長しているよう」とホッとした様子。
梅北さんは「予想する収穫の時期は7月中旬~8月。加工や加工場所をどうするのか、販路や引受先の開拓など考えることは山積みだが、まずは1年目どのような結果になるのかが楽しみ。姉妹都市提携55周年の時に、何か形になっていたらうれしい」と笑顔を見せる。