現代人に人気の高い漫画を通して、鹿児島の黒文化を対外的にアピールし、県産品のブランド力の向上につなげようと、県内の任意団体から成る実行委員と、企業の協賛により第1回「かごしま漫画クロデミー賞」が立ち上げられ、作品の募集が始まった。
「真面目なことを面白く伝える、その落差がないと人々の印象には残らない。そういう点で漫画はとても有効」と話すのは、漫画を使った販売促進や、漫画文化の定着、若手の育成などを目的に活動する任意団体「マンガプロジェクト鹿児島」会長で、「クロデミー賞」実行委員会事務局長の四元重美さん。「漫画は、最も分かりにくいことを最も分かりやすく伝える手段」だという。
出版社などが実施する漫画コンテストは多い中で、自治体主催の、テーマを観光や産業振興に絞ったコンテストは全国でもまだ数えるほどしかない。さらに、黒牛、黒豚、黒酢、黒麹焼酎、黒糖など、鹿児島には独自の「黒」文化が存在する。その先進性と独自性に目を付けて、同企画が立案された。背景には、鹿児島の農業産出額が全国3位にもかかわらず、県産品の知名度や価格面において、他県と比べて相応のブランド力が伴っていないことへの疑問があったという。その原因をPR不足や他者との差別化ができていないためとみている。
普段は「おやじギャグ担当」という四元さんが、当時話題になっていたアカデミー賞にかけて同企画を「クロデミー賞」と名付け、作品の募集を開始。広報活動には「鹿児島に漫画文化を広めよう」と志を同じくするNPO団体なども協力。「鹿児島は若者が県外へ流出する数も全国上位。それを食い止めるためにも、漫画を読んで鹿児島を知り、誇りに思い、好きになってもらいたい」と思いを込める。
実行委員会・名誉会長を務めるのは、志學館大学教授の原口泉さん。10年ほど前から「薩摩の黒文化」を提唱していた一人で、「黒文化の仕掛け人」とも自称している原口さんは「『薩摩の黒』の文化が、鹿児島の新しい時代を築くことを願っている」とコメントを寄せている。ほか、大会会長に寿福産業社長の寿福一隆さん、実行委員長には濵島印刷社長の前田幸一さん。
「クロデミー賞」への応募は無料で、応募期限は10月15日(消印有効)。プロ・アマ・年齢・ジャンル問わず、小学生部門・中高生部門・一般部門の3つの部門で表彰を行う。一般部門の作品の中から1点だけ選ばれる「クロデミー大賞」は、畜産農家や焼酎醸造元の関係者らによる1次審査、出版関係者や文化人らで構成する2次審査およびプロの漫画家による最終審査を経て決まり、賞金10万円が贈られる。入賞作品は、表彰式で配布されるプログラムにダイジェスト版が掲載されるほか、同日の展示会や、ネットなどで一般公開する予定。
表彰式は12月15日10時から、鹿児島ウォーターフロント・ドルフィンポートで開催。「鹿児島漫画・アニメ祭り(仮称)」として、書道パフォーマンスやコスプレダンス、アニメソング演奏、トークショーや同人誌即売会、入賞作品の展示会、鹿児島の黒を中心とした物産展などを予定する。