教育行政に国民の意見を色濃く反映させていくことを目的に全国各地で開かれている「リアル熟議」が8月7日、 旧・島津家別邸「仙巌園」(鹿児島市吉野町)内の秀成荘で、寺脇研さんらをゲストスピーカーに招き開かれた。鹿児島市では初めての開催。
霧島プロジェクト、教育同人社などが主催し、鹿児島天文館総合研究所などが共催。学校や社会教育、行政関係者、主婦をはじめ、大学・高校中学生など63人が参加して、「鹿児島で、日本のこれからを考える。いまこそ議を言おう」をテーマに開催された。
リアル熟議は鈴木寛文部科学副大臣による造語。多くの当事者が集まり、課題について「学習」し、「熟慮」と「討議」を重ねながら政策を形成していくことで互いの立場や果たすべき役割などの構図が具体的に描かれ、理解が深まる。こうしたプロセスの中から次世代のための教育政策を実現していこうという考え方が基本。現在、全国各地で教育委員会や青年会議所、大学などの研究機関をはじめ、さまざまな団体がそれぞれテーマを掲げ「熟議」が行われている。
当日、オープニングセッション後の「熟議」第1部では、永山由高さん(鹿児島天文館総合研究所Ten-Lab理事長)がコーディネーター、石川世太さんがファシリテーターを務め、ワールドカフェ形式で「社会でもっとこうなったらいいと思うこと」を切り口にブレーンストーミングが行われた。中学生や高校生たちの「宿題が多すぎる」「先生の授業が分かりづらい」などという言葉に、大人たちが苦笑する場面もあったほか、「公共交通機関の未整備問題」など身近な生活の問題から、政治・経済など多岐にわたる諸課題が参加者たちによって洗い出された。
第2部ゲストストークでは、寺脇研さん(元・文部科学省大臣官房審議官、京都造形芸術大学教授)と原口泉さん(志学館大学教授)、蔵満逸司さん(加世田小学校教諭)が、社会課題に対する持論を展開。その中で寺脇さんは、自らの東日本大震災被災地の若者たちとの交流から感じたという「新しい時代に通用する価値観の創造」について、ユーモアを織り交ぜながら説いた。原口さんは、義憤を感じて維新を成し遂げた郷土の志士を例に挙げながら「マニュアルのない時代を生き抜くための先見性」を養うことの重要性を、蔵満さんも世界各地を旅して学んだことを中心に参加者たちに話しかけた。
参加者たちは、引き続き空間開放討議(オープンスペーステクノロジー)に移り、テーマごとにグループに分かれ「あるべき未来」について、さらに「熟議」の後、参加者相互のフィードバックと共にゲスト講師からの講評を受け、この日のプログラムを終えた。
主催者の梶原末廣さん(霧島プロジェクト代表)は「この『熟議』が手法から実践への手掛かりの場となれば」と話す。今後、10月、12月、2月、4月に「ミニ熟議」を開き、5回の熟議の内容を提言書としてまとめていくという。