鹿児島の支援センター「しょうぶ学園」(鹿児島市吉野町、TEL 099-243-6639)の職員とセンター利用者で結成したパーカッショングループ「otto & orabu」の楽曲が、広末涼子さん主演のアパレルブランド「nico and...」のCM曲に起用されている。
同施設の敷地面積は約6500坪。「ささえあうくらし(支援)」「つくりだすくらし(創造)」「つながりあうくらし(地域交流)」をテーマに、支援施設や工房、パン店、カフェやギャラリー、クラフトショップなど、一般も自由に入れる交流スペースを設ける。同グループの結成は2001年。民族楽器を中心に結成したパーカッショングループ「otto(おっと)」と、ボイスグループ「orabu(おらぶ)」(鹿児島弁で「叫ぶ」の意味)で構成する。現在のメンバーは、「otto」=センター利用者と職員、「orabu」=職員。統括施設長の福森伸(しん)さんが指揮を執る。
「自分は音符が読めない」と笑う福森さんだが、同グループの楽曲は全て福森さんが考えたもの。福森さんが普段見ているのは、音が入る場所や声などを手書きで記した音符の無い楽譜。フレーズの長さも指揮次第で毎回変わるという。CM曲は、印象的なフレーズとして繰り返し使われる「ポンピドウ」のほか「orabu dada」など4~5曲を組み合わせて編集されている。
「健常者を基準とした音楽を目指すことは彼らにとって難しいこと。だから一生懸命練習して、その頑張っている姿に拍手が送られる。でも『音楽』は本来そういうものじゃない。『音』に心を動かされるもの」と福森さん。「ずれた音に印象が残る。ちょっと面白くて心地いい。障がい者というブランドではなく、純粋に曲として評価されたことがうれしい」とも。
「障がい者の世界はウイークポイントに焦点が当てられがち。彼らが得意なこと、彼ららしさとは一体何だろうと、ずっと模索していた」と振り返る福森さん。「不得手に見えていることは考え方一つで得意に変わる。得意なことに着目して伸ばすことに力を注ぐ方が、みんながハッピーになれる」という考えから、彼らが奏でるむき出しの表現に自分たちが合わせ、「『ずれること』を生かすことで、音楽というジャンルを広げていきたい」と熱い思いを語る。
「nico and...」のCMは2回に分けてオンエアされる。1回目は9月26日までだった。今月19日から11月1日まで、2回目がオンエアされる。