プレスリリース

アマミノクロウサギは猫の駆除前からすでに5倍に増加―根拠のない”イエネコ”の「防除推進外来種」指定に反対

リリース発行企業:公益財団法人どうぶつ基金

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公益財団法人どうぶつ基金(本部:兵庫県神戸市、理事長:佐上邦久)は、環境省が「生態系被害防止外来種リスト」の改定にあたり、全国のイエネコ(ノネコを含む)を「防除推進外来種」に追加する方針を示していることに対し、反対の署名活動を行っています。

どうぶつ基金は、環境省が公表した資料および環境省が超党派の動物愛護議員連盟「ノイヌ・ノネコPT」に提出した資料を精査しました。その結果、猫の駆除を必要とする根拠が、環境省自身の数字からは確認できませんでした。

以下の数字は、すべて環境省の公表資料または環境省が議員連盟に提出した資料によるものです。

【1】アマミノクロウサギは、猫の駆除が始まる前にすでに5倍だった

環境省が2023年6月1日に公表した個体数推定(推定中央値)です。

2003年度(2,329頭)→2017年度(11,592頭)で、約5倍

この期間、奄美大島の森林には600~1,200頭のノネコが生息すると環境省は推定しており(2011~2014年のカメラ調査)、集落には登録された飼い猫だけで4,444頭(2017年12月末時点)がいました。



猫がいる森で、アマミノクロウサギは5倍になっています。

そして環境省が森林域でのノネコ捕獲を開始したのは2018年7月です。「5倍」は、駆除が始まる前に達成されていました。この期間、奄美大島の森林には600~1,200頭のノネコが生息すると環境省は推定しており(2011~2014年のカメラ調査)、集落には登録された飼い猫だけで4,444頭(2017年12月末時点)がいました。

猫がいる森で、アマミノクロウサギは5倍になっています。

そして環境省が森林域でのノネコ捕獲を開始したのは2018年7月です。「5倍」は、駆除が始まる前に達成されていました。

【2】駆除の前後で、増加率は変わっていない

駆除開始(2018年度)の直前4年と直後4年を、同じ長さで比較しました。
- 駆除前4年(2014→2017年度):毎年 約1.145倍
- 駆除後4年(2018→2021年度):毎年 約1.140倍

段差は見られません。



どうぶつ基金は「駆除の効果はゼロである」とは主張しません。
推定には幅があり、断定はできないからです。どうぶつ基金が指摘するのは、
-駆除による増加の加速が、環境省の数字には表れていない-
この一点です。

なお、環境省が公表している最新の推定は2021年度時点のものです。

【3】猫1頭を捕まえるのに、48万7,935円

環境省が超党派の動物愛護議員連盟「ノイヌ・ノネコPT」に提出した契約額(奄美大島)です。

捕獲頭数420頭は、環境省の進捗状況評価に記載された「2022年度時点で累計420頭」と一致します。

予算は増加を続けており、2018年度の2,001万円が2022年度には6,024万円と5年で約3倍になっています。事業は2027年度まで続きます。なお2023年度以降の契約額は公表されていません。
<参考:どうぶつ基金の実績との比較>
どうぶつ基金の2025年度のさくらねこ無料不妊手術事業の実績は、53,643頭/3億2,251万4,200円1頭あたり6,012円です(不妊去勢手術・ワクチン・ノミ・ダニ駆除を含む)。

同じ2億493万円で、環境省が捕獲したのは420頭。どうぶつ基金であれば、約3万4,000頭に無料不妊手術を実施できます。




【4】捕獲されているのは、どの「猫」か

環境省の公式カウントは「ノネコ 420頭」のみで、内訳は示されていません。
環境省の希少種保全推進室長は議員連盟の場で「ノネコと野良猫の区別が難しいことは認識している」と述べています。

- 議員連盟PTでの報告によれば、捕獲された猫のうち耳先をV字にカットされた「さくらねこ」(不妊去勢手術済み)の割合は、1年目11%から5年目46%へと増加しています。
- 環境省自身も「集落で野良猫として捕獲されTNRされた個体が、集落から遠く離れた山中で確認されることもある」と記載しています(奄美野生生物保護センター)。
- 環境省が議員連盟に提出した資料によれば、2018~2023年度に飼い猫とみられる猫が30頭捕獲され、うち19頭が飼い主に返還されています。


【5】環境省「科学的な根拠が不十分でも」

どうぶつ基金はこれまで、「猫の駆除が必要だという根拠を示してください」と環境省に求め続けてきました。

環境省は、2022年のメディア取材に対して以下のように回答しています。
「アマミノクロウサギがノネコに捕食されているのは間違いありません。危険があれば科学的な根拠が不十分でも、早めに対策をするというのが保全生物学の鉄則です」
── PRESIDENT Online 2022年3月2日/笹井恵里子記者の取材に対する環境省の回答





どうぶつ基金は、予防原則という考え方そのものを否定しません。危険が疑われるとき、確証を待たずに動くべき場面があることは理解します。

どうぶつ基金が問うているのは、その原則を、2,000年前から人と暮らしてきた動物に、全国規模で適用してよいのか--ということです。

【6】「世界自然遺産登録にマイナス」――公式文書との食い違い

環境省は「奄美大島における希少種保全に関するQ&A」において、こう説明しています。
これらの事業は固有種・希少種の保全のために実施しているものであり、世界自然遺産登録を直接の目的に実施しているものではありません。


一方、同じ2022年の取材に対し、環境省はこう回答しています。
「世界遺産の価値というのは、顕著で普遍的な価値といわれる。その一つにアマミノクロウサギをはじめとするこの地域にしか棲んでいない生き物というのがある。その数が増えていようが減っていようが、個体が食べられている。それ自体が世界自然遺産登録にマイナスになると我々は感じています
── PRESIDENT Online 2022年3月2日/笹井恵里子記者の取材に対する環境省の回答


公式文書では「世界自然遺産登録を直接の目的に実施しているものではない」。
取材には「世界自然遺産登録にマイナスになる」。

どうぶつ基金は、この食い違いについて環境省の説明を求めています。
さらに、どうぶつ基金が注目しているのは「その数が増えていようが減っていようが」という部分です。
この回答に従うならば、アマミノクロウサギが5倍に増えたという環境省自身のデータも、駆除の是非を判断する材料とはされていないことになります。

どうぶつ基金が実施している署名2.「世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!」は、まさにこの点を問うものです。

【7】一方、TNRは環境省自身が成功させている

環境省が2026年7月に公表したロードマップ推進評価(2025年度)によれば、
- 集落地区全体の野良猫1,168匹のうち、不妊去勢済みは1,100匹(94.2%)
- 外飼い猫の不妊去勢率 96.8%
- TNR累計 5,535頭の不妊化を実施(2022年度時点)

環境省の管理計画には「近年集中的にTNRが実施されている集落の中には、野良猫の個体数が横ばいとなった例も確認されている」との記載があります。

一方、森林域では2018~2025年度末の8年間で783匹を捕獲。環境省が当初推定した600~1,200頭の下限を超えていますが、毎月のノネコ識別個体数は40~70匹で推移しています。環境省が新たな課題として挙げているのは「森林域で確認される繁殖」「トラップシャイ(わなを忌避する個体)」「捕獲困難な未手術野良猫への対応」です。

環境省は、奄美という現場でTNRを実施し、94.2%という数字を達成しています。それにもかかわらず、全国の猫には「防除推進」を適用しようとしています。どうぶつ基金が問うているのは、この一貫性の欠如です。
【公益財団法人どうぶつ基金 理事長 佐上邦久 コメント】
猫はずっと昔から、アマミノクロウサギを食べてきました。それでも、絶滅しませんでした。

猫は1850年の記録『南島雑話』にすでに登場します。ハブとネズミの対策として、人が飼い猫を放し飼いにしてきたと、環境省自身が管理計画に書いています。猫は、勝手に来たのではありません。人が連れてきて、人が放したのです。


私たちは、希少種の保全に反対しているのではありません。アマミノクロウサギもケナガネズミも、絶滅すれば二度と戻りません。守るべきだと考えています。猫が獲物を捕ることも否定しません。

申し上げているのは、ただ一つです。駆除が必要だという根拠が、環境省の数字のどこにもありません。

猫の数は、駆除ではなく適正飼養とTNRで減らせます。これは私たちの主張ではありません。
環境省自ら18年前に書き、奄美で実践し、94.2%の達成率という数字で自ら示していることです。

環境省は文書で「世界自然遺産登録が目的ではない」と書き、取材には「世界自然遺産登録にマイナスになる」と答えています。そして「その数が増えていようが減っていようが」とも。
「増えていても関係ない」というのであれば、私たちは何の数字を示せばよいのでしょうか。

奄美の森の奥の話と、全国のご家庭の猫の話は、別の話です。全国のイエネコを「防除推進外来種」にする理由を、私たちはまだ聞いていません。

■ 実施中の署名

【署名1.】イエネコ(ノネコも)を「防除推進外来種」にしないよう、環境大臣に求めます
https://c.org/fXYrCvvjWn
提出先:環境大臣

【署名2.】世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!
https://c.org/b5znBYGSMh
呼びかけ人:公益財団法人どうぶつ基金、NPO法人ゴールゼロほか
提出先:環境大臣、ユネスコ、IUCN、沖縄県知事、鹿児島県知事ほか

■ 報道関係者の皆さまへ

本リリースに記載した数字は、すべて環境省の公表資料、または環境省が超党派の動物愛護議員連盟「ノイヌ・ノネコPT」に提出した資料によるものです。
主張ごとの出典対照表(環境省文書の節番号まで記載)および想定問答集をご用意しています。 ご希望の報道関係者の方は、問い合わせ先までご連絡ください。理事長・佐上邦久への取材にも対応いたします。

<主要出典>

※写真「猫がアマミノクロウサギの幼獣を捕食する場面」(2008年6月27日23時11分、宇検村・赤房林道付近)は、環境省那覇自然環境事務所の提供によるものです。クレジット「環境省那覇自然環境事務所 提供」を明記のうえご使用ください。



公益財団法人どうぶつ基金
どうぶつ基金は、1988年に横浜で設立された民間・非営利の動物愛護団体です。活動資金のすべてを民間からの寄付でまかなっており、飼い主のいない猫の無料不妊手術「さくらねこTNR(※)」、多頭飼育崩壊の犬・猫の無料不妊手術、里親探しの支援、写真コンテストの開催、啓発活動や署名活動等を行っています。
※さくらねこTNR…「さくらねこ」とは、不妊手術済のしるしに、耳先を桜の花びらの形にカットした猫のこと。「さくらねこTNR」とは、飼い主のいない猫等に不妊手術を実施することで繁殖を防止し「さくらねこ」として一代限りの命を全うさせ、飼い主のいない猫に関する苦情や殺処分の減少に寄与する活動のこと。
※TNR(ティー・エヌ・アール)…Trap(猫を捕獲して)、Neuter(不妊手術を行い)、Return(元の場所に戻す)の略。野良猫を殺さずに減らす最も有効かつ人道的な方法で世界中で行われている。

どうぶつ基金 ちきゅう部とは…
https://www.doubutukikin.or.jp/activity/earthclub/
「いのちとちきゅうをつなげる視点で社会を見直す」をモットーに、環境・動物問題の構造分析と提言を行う部門

<組織概要>
名称:公益財団法人どうぶつ基金(Animal Action Fund)
住所: 兵庫県芦屋市奥池南町71-7
設立:1988年6月
理事長:佐上 邦久
公式サイト:https://www.doubutukikin.or.jp

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