鹿児島の焼酎の酵母と麹菌を積んだスペースシャトル「エンデバー」が5月16日に打ち上げられた。
JAXAの「きぼう」有償利用事業として、鹿児島初採択となった「鹿児島宇宙焼酎ミッション」の一環。同プロジェクトは、鹿児島大大学院医歯学総合研究科の馬場秀行教授が約2年前に発案。農学部の鮫島吉廣教授に参加を持ち掛けたところからスタートした。同大の研究者や県内12の焼酎メーカーなどで実行委員会を結成し、鮫島教授が代表に就き、準備を進めてきた。
宇宙へ旅立った酵母と麹菌は3種類ずつ。酵母は芋焼酎用、黒糖焼酎用、そして、鹿児島大学が開発した「篤姫酵母」。麹は黒麹、白麹、黄麹。
同プロジェクトの目的について、鮫島教授は「学術的な意味では、宇宙線を浴びた後の酵母の影響について調べる。新しい香りやうま味の発見へとつながれば」と期待を込める。
「焼酎に興味を持ってもらうきっかけにもなる」とも。鮫島教授は大学卒業後、メーカーでウイスキーを造っていた。地元鹿児島に戻った後、焼酎メーカーに勤務し、焼酎の魅力のとりこに。「ウイスキーや日本酒に比べ、焼酎の作り方は世界的にも珍しい。焼酎メーカーは素材などのアイデアで勝負でき、小さなメーカーでも夢が持てる世界」と話す。
「何より、宇宙にはロマンがある」と鮫島教授。「誰もが宇宙への憧れを持つ。鹿児島には内之浦と種子島にロケット基地がある。焼酎には宇宙の文字も含まれる(しょ『うちゅう』)。焼酎を宇宙へ連れて行かないわけにはいかないでしょう」とも。
酵母や麹菌は宇宙空間を約2週間旅した後、今月末の帰還を予定している。その後、鹿児島大や焼酎メーカーに協力の下、さらに研究を重ね、年内の宇宙焼酎発売を目指す。鮫島教授は「何か新しいものを生み出すためには、夢を見なければならない。宇宙を旅したロマンの焼酎で、閉塞(へいそく)感が漂う今の日本に風穴をあけて元気にしたい。『よい』の宇宙空間に漂う焼酎の味になれば」と笑顔で話す。