鹿児島の不動産会社「川商ハウス」(鹿児島市新屋敷町)のCMで、ピエロ風のコスチュームで登場し、軽快な音楽に乗せて「幸せじゃんじゃん川商じゃん」と高らかに歌い上げるユニークなキャラクター「大門ちゃん」が話題を集めている。
その正体は演歌歌手の大門三郎さん。大門さんは1950(昭和25)年、種子島で生まれた。小さなころから歌うことが好きで、歌手の北島三郎さんをもじり、「南島(なんとう)三郎」と名乗るほど。しかし、キャリアのスタートはコメディアンとしてだった。高校卒業後、横浜でタイル職人として働きながら、1969(昭和44)年にコメディアン・牧伸二さんの最後の弟子となった。数年後、コメディアンを辞め、2人の子どもを育てるためタイル職人として再び働き始めた。そうした中、姉の紹介で歌謡教室に通うことに。そこで歌手としての才能が認められ、「祝い酒」をレコーディング。インディーズでの発売だったが、CD1,000枚を手売りし、約1カ月で完売した。
星条旗などをモチーフにしたピエロのコスチュームは2008年から、以前から交友のあった鹿児島のある社長のアドバイスで始めた。「『アメリカンドリーム』という言葉もあるように、夢を信じていれば必ずかなう」と大門さん。歌手活動は必ずしも平たんではなかったが、「それでも、女房や子どもたちは辛抱して、ずっと応援してくれた。周りの人からも助けてもらった。だからこそ続けることができた」と振り返る。
多くの人の後押しを受ける中、2009年に同じ種子島出身の川商ハウス西田隆昭社長と出会い、同社CMに出演するチャンスを得た。「幸せじゃん」と明るい声で歌っているが、その言葉には、苦しかった時期を乗り越え、周囲の人々への深い感謝の思いが込められている。同社担当者は「大門ちゃんの予想以上の反響に驚いている。今後もCMなどで活躍してもらいたい」と期待を寄せる。
大門さんは普段からピエロのコスチュームを着て、街に出没しては、道行く人に「幸せでありますように」と優しくほほ笑みながら声を掛けている。「多くの人がありがとうと笑顔を返してくれる。これからも皆さんが笑顔になるように、幸せを願い続けたい」と大門さん。今後は、東日本大震災の被災者にも、この「幸せを届ける活動」を長期的に継続して行っていくつもりだという。