「黒酢」発祥の地である坂元醸造(霧島市福山町福山)で9月3日、秋の風物語である「壺(つぼ)造りの黒酢」の秋の仕込みが始まった。
現在、福山町には9社の醸造所が残る。江戸時代後期から続く一番の老舗で、最大規模の醸造所である坂元醸造は、桜島を背景に、高さ約60センチ、容量54リットルの壺約5.2万本が壺畑に並び仕込み作業を行う。
江戸時代から200年以上続く伝統的な製法で造る壺造りの黒酢は、春(4月~6月)と秋(9月~10月)の年2回行う。仕込みから1年半以上かけて、太陽の力で自然発酵、熟成させて黒酢ができ、発酵を始めた壺からは音が聞こえ、透明だった色は熟成が進むにつれ、琥珀(こはく)色に変化するという。職人は毎日、一壺一壺に耳を近づけて音を聞き、中を目で確かめ、より熟成を促すため、竹の枝で攪拌(かくはん)作業を行う。長い物では5年かけて、「壺造りの黒酢」を完成させる。
坂元醸造の中馬雅信さんは「併設するレストランのテラスからは仕込み作業など見ることができる。黒酢を使った体に優しい料理を提供する」と話す。